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性器ヘルペスについて
性感染症は生活習慣病の時代へ
梅木 薫(市立函館病院皮膚科科長)
性感染症とは主に性行為に伴う性的接触によって、皮膚や粘膜を通し感染するいろいろな病気の総称です。約三十年前、国際的にSTD(Sexually Transmitted Diseases)という概念が提唱されるようになりました。日本でも一九八八年に性感染症学会が発足し、STDの日本語訳を「性感染症」と定めました。
かつての「性病」という特別視された時代から、現在ではほかの感染症であるインフルエンザや結核などと同様の感染症として扱われる時代となっています。性感染症は特別な病気ではなく、現在では性生活をもつ人なら誰もが罹りうる感染症、「生活習慣病」とさえ考えらえるようになっています。
性病の時代は梅毒、淋病、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫の四つが代表でしたが、現在ではウイルスによる新しい時代の性感染症へと変わってきています。このウイルスによる性感染症にはエイズや尖圭コンジロームなどがありますが、最近とくに増えているのが「性器ヘルペス」です。
1型と2型のどちらも性器ヘルペスに
性器ヘルペスはヘルペスウイルスの一つである単純ヘルペスウイルスの1型か2型の初感染、または同じウイルスの潜伏感染の再活性化(再発型)によって起こります。以前はくちびるや顔面など上半身に発症する口唇ヘルペスは1型、性器を中心とする下半身に主に発症する性器ヘルペスは2型と言われていましたが、現在では1型と2型のどちらでも性器ヘルペスが起こることが知られています。これはオーラルセックスなどのさまざまな性行為によることが原因と考えられています。
感染症は痛みもひどく、排尿も困難に
症状は初感染と再発とでは相当に違ってきます。初感染ですが、性交渉などの接触感染より三日から一週間の潜伏期をおいて発症します。口唇のヘルペスは皮膚の違和感やかゆみなどの自覚症状から約半日程度で赤く腫れてきます。そして腫れの上に水ぶくれができ、最後はかさぶたとなり二週間ほどで治ります。陰部のヘルペスも口唇と同様に三日から一週間の潜伏期をおいて発症、三十八度以上の発熱があることもあります。女性の場合、外陰部に痛みあるいはかゆみを伴って始まり、じきに小陰唇の内側や大陰唇の左右対称な部位に多数の水疱が現れ、数日中に水疱が破れて潰瘍になります。痛みから排尿も困難となり、脚の付け根のリンパ節が腫れることによる痛みも加わり、歩行なども困難になることもあります。ヘルペスウイルスは外陰部ばかりか、膀胱や子宮にも侵す範囲が及ぶことがあり、時に髄膜炎を引き起こすことも知られています。
以前はほとんどの人が知らないうちに乳幼児期にヘルペスウイルス1型に感染し免疫を獲得しましたが、現在は免疫のない人が増え、1型ばかりか2型でも症状が高度の人が増えています。再発型は過労やストレス、病気、月経、性交渉などを契機として、既に体内に潜伏感染しているヘルペスウイルス(主に2型)が外陰部に発症するもので、水疱や潰瘍が繰り返し現れます。症状も一般的には初感染よりは軽く、痛みもあまり強くはありません。
妊婦が分娩時に性器ヘルペスに罹っている場合ですと、新生児が産道でウイルスに感染し新生児ヘルペスとなることがあります。新生児はとても抵抗力が弱いため、重症となってしまう例もあります。もし、分娩時に性器ヘルペスとなってしまったときには、帝王切開により出産する方が安全といえるでしょう。
性器ヘルペスには早期治療
急性型が鎮静化するには二週間から四週間が必要です。早期にしかも適切に治療を行えば短期間で症状は治まります。治療薬としては抗ウイルス薬であるアシクロビルやビダラビンの注射、内服薬、軟膏があります。これはヘルペスウイルスの活性化を阻害するものです。局所の痛みに消炎鎮痛薬の投与や局所麻酔剤の塗布が行われることもあります。
ヘルペスは一度罹ると潜伏感染し根治することはできません。性器ヘルペスでは2型に罹ったときには一年以内に八割以上の人が再発し(1型のときは約二割)、再発の可能性は高いといえるでしょう。再発の危険性が高いのは、やはり体力が低下しているときなどですが、あまり神経質になって、再発をしていないのに再発だと思い込むケースもあるようです。それでも症状があったときにはすぐに医師の診断を受けるようにして下さい。また、再発の前ぶれ段階で抗ウイルス薬を内服することで症状の発現を抑えることも可能となっています。
性感染症を防ぐために(セックスパートナーの診療も)
性行動の自由化や低年齢化に伴って、性器ヘルペスを含む性感染症全体に増加傾向がみられます。問題は気づかずに感染したり、またセックスパートナーに感染させる機会が常にあるということです。そして時には母子感染により子供にまで重大な影響を及ぼす恐れもあるのです。
性感染症は誰でも感染する可能性があり、その危険性は相手の数に比例して増えていきます。性感染症を予防するためにはコンドームを正しく使ってうつらない、うつさないということを守り、罹った場合は早期治療を是非実行してください。さらに、自分に感染が判明した場合でパートナーにも症状が現れているときには、パートナーの診療も早期に行うようにして下さい。
(以上、「メディカルはこだて」第6号の特集「女医が診る」より)
登録項目:掲載記事より 投稿者 :メディカルはこだて編集長 登録日 :2006年01月20日







