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PEG(胃瘻)を極める

PEGの適応になる患者さんは
岡田 晋吾(北美原クリニック院長、函館五稜郭病院客員診療部長)

 胃瘻造設術はわが国においてここ十年の間に急激な勢いで普及してきた手技のひとつです。その要因としては患者さんの高齢化や在宅医療の広がりなど社会の変化と今までの点滴による栄養療法から栄養剤を使った経腸栄養療法へのシフト、安全で簡便なPEG造設キットの開発などの医療現場の変化が考えられます。PEGにまつわるさまざまな手技の開発によりPEGが適応となる患者は増えていますが、造設や管理に伴う合併症も増えており医療者は十分な知識を持って患者や家族にていねいに説明をし、造設後の管理を行っていかねばならないと考えます。またPEGはあくまでも手技であって、患者の全身状態、社会状況にあった栄養管理を行っていかなければ患者や家族の満足感が得られません。そのためにはPEGを作られる病院において医師だけでなく看護師、栄養士など多職種がそれぞれの立場から関与するNST(栄養サポートチーム)などのチーム医療の充実が必要であり、退院後も患者やご家族が安心できるような地域の栄養サポートネットワークの構築が望まれます。私も開業して在宅においてPEGを使用されている患者さんから往診を頼まれることが多く、函館地区においてPEG患者さんが増えてきていると感じています。この連載が函館地区のPEGケアや栄養管理の質の向上と患者さんやご家族のPEGについての理解に少しでも役立てれば幸いです。

はじめに
 一般的に栄養の投与ルートとしては静脈(点滴)栄養法と経腸(栄養剤)栄養法のどちらかが選択されます。その選択基準は腸管の栄養を吸収する機能が温存されているかと予想される絶食期間の長さに基づいています。この選択基準に従うと経腸栄養を選択される症例が多いはずですが、現実の臨床現場においてはその簡便さから経腸栄養適応例に対しても静脈栄養が選択されることが多かったのが日本の現状でした。ところが最近の医療を取り巻く環境の変化から静脈栄養に伴う合併症を防ぎ、より安全にまた安く施行できる経腸栄養が見直され、積極的に行われるようになってきています。このような傾向にはここ数年の新しい経腸栄養剤の開発、胃瘻造設キットの進歩が寄与しているものと思われます。

PEGの歴史
 胃瘻の歴史は古く、19世紀半ばにはSedillotによって人に対して初めて開腹的胃瘻が試みられています。十九世紀後半には現在の開腹的胃瘻造設術の原型が確立し、一般的に行われるようになりましたが、縫合不全などの合併症も認められまた全身麻酔下で行われるためより簡便で安全に造設できる手技の開発が待たれていました。
 PEGは1979年にGaudererとPonsky1)が小児の神経障害患者において、内視鏡を用いた胃瘻造設に初めて成功しその後成人例にも行いその有用性が確認されました。GaudererとPonskyらが行った方法はPULL法と呼ばれています。その後1983年にSacksとVineら2)によりガイドワイヤーを用いるpush法が、同じく1983年にわが国の上野、門田ら3)によりintroducer法の手技が開発されました。現在ではそれぞれのキットが発売されまた造設時の安全確保のための胃壁固定具も開発されており、より簡便かつ確実に造設することが可能となっています。ちなみに私はintroducer法の開発者の一人である門田先生に外科を教わった時期があり、胃瘻についても早い時期にご指導を受けました。

胃瘻って何?
 さて歴史について書きましたが、胃瘻って何?って思われている読者の方も多くおられるはずです。簡単に言うとお腹に穴を開けて作る新しい小さな口のことです。そこからチューブを挿入して栄養を入れることが可能になります。昔はこの口を手術で作らなければいけなかったのですが、今は皮膚を通して(Percutaneous)内視鏡的に(Endscopic)胃瘻を作る(Gastrostomy)ことができるようになり、頭の文字をつなげてPEG(ぺぐ)と呼んでいます。傷が落ち着けばお風呂にも入れますし、消毒も不要なため自宅で管理することが可能で、必要がなくなったら抜けば2〜3日で閉じてしまうと言う優れた利点があります。しかし適応を間違えたり、管理法を知らなければ患者さんやご家族の方々に経済的、身体的負担をかけます。きちんと理解することが重要です。

PEGの適応と禁忌
 経鼻胃管(鼻から胃に入れた管)による経腸栄養法を行っている患者さんの大部分がPEGの適応となると考えられます。また点滴で栄養を受けられている患者さんでも腸管が安全に使えるならばPEGの適応になります。従来多く行われてきた経鼻胃管による経管栄養投与と比較してPEGは交換が容易である(ボタン式など)、違和感がない(目の前になく鼻が痛くない)、嚥下リハビリが容易(のどが使える)などの利点があり患者さんや医療者にとってメリットは多いが、侵襲性(体に傷をつける)の手技でありその適応、禁忌について正しい知識を持っていることが求められます。日本消化器内視鏡学会の『経皮内視鏡的胃瘻造設ガイドライン』4)ではPEGの適応には1.経腸栄養のアクセスとしての胃瘻造設、2.誤嚥性肺炎を繰り返す例、3.減圧目的の3つがあげられています。すなわち脳血管障害、痴呆などにより自発的に摂取できない例、神経疾患などによる嚥下不能な例、誤嚥のための経口摂取不能な例、経鼻胃管留置による誤嚥例などがあげられており、療養型医療施設に入られている患者さんに適応となることが多いです。また癌の末期で嘔吐を繰り返し苦しむ患者さんにも有効な手技となっています。ガイドラインにはPEGの非適応・禁忌について書かれており、造設や管理に伴う合併症もあり適応決定に当たっては症例を主治医、造設医、看護師、栄養士などチームで十分に検討して行うことが求められます。(図3)
 
REFERENCE
1) Gauderer NMW, PonskyJL, Izant RJ:Gastrostomy without laparotomy:A percutaneous technique.J Pediatr Surg 1980;15:p872-875.
2) Sacks BA, Vine H et al : A Nonoperative Technique for Establishment of Gastrostomy in the Dog. Investigative Radiology 18: p485-487,1980
3) 上野文昭,門田俊夫:経皮内視鏡的胃瘻造設術—簡易化された新手技に関する報告. Progress of Digestive Endoscopy 23:p60-62,1983
4) 上野文昭,鈴木裕,嶋尾仁:経皮内視鏡的胃瘻造設術ガイドライン,日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編,消化器内視鏡ガイドライン第2版,医学書院,東京,2002,p299−309.

(以上、「メディカルはこだて」第14号より)

登録項目:掲載記事より   投稿者 :メディカルはこだて編集長  登録日 :2006年01月23日


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